
撮影が終わり、家族に写真を見せるとき、ふと気づくことがある。
そこに写っているのは、家族だけじゃない。
写真の端々に、私自身がいるのだ。

お父さんのぎこちない笑顔の奥に、私の「いいですね!」の声がある。
お母さんのやわらかい表情の裏には、私の「大丈夫、きれいですよ」の一言がある。

子どもたちの弾けるような笑顔は、私が仕掛けた小さな遊びの証。
そう、フォトグラファーは写真には写らない。
でも、確かにそこに「いる」。
撮影者のまなざし、声のトーン、空気のつくり方——
それがすべて、写真の中に滲み出る。
だからこそ、私たちはただシャッターを押すだけではなく、
目の前の人たちと 一緒に、写真をつくる のだ。

そして、誰かの家の壁に飾られたその写真の中に、
見えないけれど確かに、私も一緒にいるのだと思うと、
フォトグラファーという仕事は、なんて幸せなものなんだろうと思う。