妻に先立たれ、酒に溺れた老作家が、隣の家に住む小学生の少女と仲良くなって、人生をやり直す勇気をもらう映画「最高の人生のはじめ方」を見て感じたことです。
本が好きで「自分も作家になりたい」と思っている隣に住んでいる少女が、自分で貯めた少ないお金を持って老作家に教えを乞うと「あの向こうの風景に何が見える?」何も見えない少女は「何も見えない」と言うと老作家は「それじゃあ何が見えない?」と禅問答のような返事をしました。
そんな事を繰り返していたある日、またいつものように老作家は「あの向こうの風景に何が見える?」と少女に尋ねました。すると少女は「今日は女の子が見える。男の子に追いかけられていて、近所の家に助けを求めて訪ねて行って、出て来た男の人に助けてもらって ….。」と頭の中で空想した風景をそのまま言葉にして老作家に伝えました。すると老作家は「これで君も立派な小説家になれるよ」と言ってその少女の頭を撫でました。そして老作家もこの少女のおかげでもう一度ペンを持つ勇気をもらったという心温まるヒューマンドラマです。
この少女が将来大人になって作家になるかどうかは分からないけれど、少なくともこの体験は少女の人生において大きな収穫であり、その後の人生が大きく変化していくことだけは間違いないだろうと、私はこの少女の経験を羨ましく思って見ていました。
観察する事、そして想像する事の大切さと楽しさは作家希望者だけでなく、私たちスタジオに関わる仕事にも、そして人生にもきっと役立つと思います。